人生100年!生涯エンジニア人生!

楽しいエンジニア人生!

それほどトンデモじゃない いちばんやさしいWeb3の教本

概要

2022年7月20日に発行した「いちばんやさしいWeb3の教本」を購入して読んだ感想です。

なお、2022年7月24日現在、出版元から下のような提示がされていて、大手ECサイトでは電子版は既に発売中止で紙の本は在庫のみとなっています。(紙の本も在庫無くなってます)

book.impress.co.jp

弊社2022年7月20日発行の「いちばんやさしいWeb3の教本 人気講師が教えるNFT、DAO、DeFiが織りなす新世界」の内容に関しまして、 SNSを中心にさまざまなご意見をいただいておりますが、現在著者ならびに外部有識者、編集部におきまして内容の検証、精査を行っております。
今後の対応につきましては、修正文の掲載、書籍の回収なども含めて検討しておりますので、方針が決まり次第発表させていただきます。 なお、今後の方針発表は7月25日月曜日を予定しております。 それまでの間、予定しておりました第1章、第2章の無料公開は中止させていただきます。

購入動機

前評判では意味不明なワードサラダというパワーワードがあったので、すべてそんな感じかなと思っておりました。

しかし、そのときに公開されているのは1章と2章*1のみで、1章は前評判通りでしたが2章はそうでもないと感じたので、どういう思いで書いたのかというのを知りたいという気持ちで購入しました。

感想

NFT、DAO、DeFiなど非常に詳しく書いてあり、一部主語がデカい部分や色々と間違っていたりと、間違いの部分を目をつぶれば、それほどトンデモとは感じませんでした。
間違いが多すぎて初心者向けじゃないとも感じました。
要するに、怪しいビジネス書にはなっていないと言うことです。
間違いが多いのは、出版元も訂正すると言っていたので、そこは期待したい。残念ながら発売中止となり間違いが訂正されることはなくなりました。

ちなみに間違いについて1つ例を上げると、DeFiのレイヤー解説でSettlement layerとAsset layerをまとめてブロックチェーンにするのは、ちょっと強引やなーと感じるところがあります。

本書から図表24-1を引用してます:

世間的な例:

https://research.stlouisfed.org/publications/review/2021/02/05/decentralized-finance-on-blockchain-and-smart-contract-based-financial-markets

匿名性と透明性についての言及もされており、本書ではAML(Anti-Money Laundering)とCFT(Countering the Financing of Terrorism)*2の話題にも真摯に触れており、Web3がきな臭いビジネスとは違うんだと読んでて感じました。
また、7章を読むとWeb3の世界のきな臭さについて憂いていることがすごく読み取れます
私が思うに、この本を書いたきっかけは世間にあるWeb3の解説がきな臭い物ばかりで、それを何とかしたかったんじゃないかなと感じます。
また、私はこの本を読んで、彼らの考えを知って学ぶところも正直ありました。
特に最後の7章では執筆者の気持ちがあるので、そこは読んでおきたい。

ただ、その行動でWeb3最高!それ以外は駄目!的な感じに書かれているところが多々あります。
そういう過去のテクノロジーがあってこそWeb3があるのに、否定とも取れるような感じになっているのが残念です。
また、ブロックチェーンこそが分散テクノロジーだと言ってたり、いや、それはWeb2の世界というかインターネットの根本だぞ!って感じです。
もう少し既存の技術に対してリスペクトしてほしいなーと思ったりします。

そして、それに追い打ちかけているのが、この著者の特徴と言える書き方である「中途半端な理解」「乱暴な説明」「言葉足らず」です
特に1章は、それのオンパレードになっており結果として炎上に結びついたと考えられます。
例えばプロトコルについては「共通ルール」として書いてあり、大きな意味では間違っていないけど、これこそ「中途半端な理解」「乱暴な説明」「言葉足らず」の典型となっています。
コンピューターを語る上でプロトコルといえば「OSI参照モデル*3が出てくる世界なので、それを踏まえて、プロトコルとは何か?を例えるときは定義から入ります。
そして、ブロックチェーンプロトコルと仮定したらなど言葉から在り方まで定義したり、説明が足りないと感じたらわかりやすい言葉を追加するなど、初心者向けに説明するならば色々と書かなければならないことは沢山あります。
他の章も、そうなのですが、1章は特にひどいです。

そのため私個人として思うことは、1章は全削除か誰か別の方が執筆したほうが良いと感じます。(まあ、改訂版が出ることが無くなったので、それも無いですね)

まとめ

  • 思ってたほどトンデモな本じゃなかった
  • 7章は読んでほしい
  • Web3界隈のきな臭さを憂いているのは感じ取れる
  • 1章は本当にひどいです
  • 1章以外も間違いが多数あります
  • 一部「中途半端な理解」「乱暴な説明」「言葉足らず」になっているので「いちばんやさしい本」とは言い切れない
  • 私は価格通りの価値を感じたが、万人向けではないのでオススメできない

余談

バージョンで語る物って、私はどうしてもDoCoMo2.0を思い出します。
あれこそ、Web2.0を「中途半端な理解」した人が「乱暴な説明」で「言葉足らず」でプロモーションした物でしたね。

www.j-cast.com

*1:発行記念で2022年7月20日~7月31日まで1章と2章を公開してたのですが、炎上後2022年7月23日をもって非公開になりました。

*2:https://www.zenginkyo.or.jp/news/2018/n10817/

*3:https://ja.wikipedia.org/wiki/OSI%E5%8F%82%E7%85%A7%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB